2005年1月22日

底冷えのする土曜日。風にあおられた雪が、わたぼこりのように、下から上へ飛び回っております。

私は15年前から外国でドイツ語と英語を使って働いていますが、油断しますと日本語をあっというまに忘れてしまいます。このため、なるべく美しい日本語を読むように心がけています。今は夏目漱石を読み返していますが、昔の日本を知るためにもとても参考になります。

文章を読まなくても、文字が立ってこちらの目に飛び込んでくるという経験を、開高健が書いていましたが、夏目漱石の「草枕」は私にとって正にそうした体験をさせてくれました。英国留学中の苦しい生活の後に、夏目漱石がこの東洋的文章に開眼したというのも、私にはよく理解できます。さらに、夏目漱石の小説は学生の頃に読んでもとても理解できるものではなく、ある程度の人生経験をしてからでないと、味わうことができないのではないでしょうか。